森保監督が最後に見せたのは、勝者の顔じゃなかった


6月29日深夜(日本時間30日)、ヒューストン。ブラジル戦、後半アディショナルタイムの失点で、日本のW杯はまた決勝トーナメント1回戦で終わった。1―2。

正直、この結果自体には驚かなかった。相手はブラジルだ。むしろ驚いたのは、試合が終わった後だった。

円陣で、監督が先に謝った

普通、負けた直後の円陣というのは監督が選手を鼓舞する場面だと思っていた。でも今回伝えられているのは逆だった。森保監督がまず口にしたのは、選手への叱咤でも激励でもなく、謝罪だったという。

「導いてあげられなくて申し訳ない」という趣旨の言葉を選手たちに伝えたあと、続けて「違う意味での最高の景色を見せてもらった」と感謝を口にしたと複数のメディアが伝えている。

結果を出せなかった責任者が、部下より先に頭を下げる。これ、口で言うのは簡単だけど、負けた直後の、まだ興奮も悔しさも冷めていない状態でできることじゃない。

「最高の景色」の中身が二重だった

大会を通じて掲げてきた「最高の景色を」という合言葉。優勝を意味するその言葉を、監督は試合後の会見でもう一度使っている。

ただしそこには、当初の意味とは違うニュアンスが混ざっていた。優勝という意味での景色は見られなかったが、選手やスタッフが毎回の活動で本気の準備をしてくれたこと自体が、自分にとってのもうひとつの「最高の景色」だった――というような趣旨のことを語っている。

同じ言葉を、負けた後に別の意味で使い直す。これは狙ってできることではなくて、たぶん本人の中でその日その瞬間に言葉の意味が更新されたんだと思う。用意していたコメントには聞こえなかった。

それでも、批判はある

きれいな話ばかりではない。試合終盤、1-1で防戦一方だった場面での采配について、後日放送された音声から「このまま行こう」「勝つなら延長、PK」という指示が明らかになり、ネット上では采配への批判も出ている。

感動的な円陣のシーンと、采配への疑問。この両方が同時に存在しているのが、たぶんこの敗戦の実態に近い。どちらか一方だけを切り取って美談にするのは、あまり誠実じゃない気がする。

田中碧が泣いた理由

もう一つ、この試合で語られたのが田中碧のことだった。アディショナルタイム、彼のボールロストが失点のきっかけになった。試合後、田中は取材対応もできないほど泣き崩れ、キャプテンの板倉滉に支えられていたという。

ブラジルのマテウス・クーニャが歩み寄り、声をかけていたことも伝えられている。母国メディアには、田中のプレーや日本代表への敬意を語っていたそうだ。相手選手からの言葉というのは、味方からの慰めとはまた違う重みがある。

一方でSNS上には田中への心ない声も向けられ、本田圭佑が「結果論だから誰も責められない」という趣旨で擁護する場面もあった。称賛と誹謗中傷が同時に飛び交う、今のスポーツ観戦の縮図のようなできごとだったと思う。

結果は出なかった。それでも

5回目の挑戦でも、決勝トーナメント1回戦の壁は越えられなかった。事実としてはそれだけだ。

でも、負けた直後にまず頭を下げる監督と、その隣で悔し涙を流す選手と、相手チームから伸びてきた手。この3つが同じ夜に起きていた、ということのほうが、勝敗の数字よりも記憶に残る気がする。

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