歯磨きの後に、歯と歯のあいだへそっとフロスを通す。今では私の毎日の日課ですが、はじめてフロスの存在を知ったのは30年ほど前、中学生になったばかりの頃でした。友達が貸してくれた昭和の少女漫画が、そのきっかけです。この記事では、その思い出をまじえながら、デンタルフロスの歴史や毎日使うメリット・デメリット、おすすめのタイミングまで紹介します。
少女漫画で出会った「フロス」という未知の習慣
友達が貸してくれたのは、成田美名子さんの少女漫画『CIPHER(サイファ)』でした。絵のタッチが好きで、お話もぐっと心に響く作品です。何巻だったかは忘れてしまいましたが、主人公アニスがはじめて、双子の兄シヴァにデンタルフロスの使い方を教わるシーン、そのあとに弟サイファとのシーンがありました。
久々にCIPHERを読み返して、サイファがアニスに「歯医者に行ってきなさい」と言うシーンで(私も行かなきゃ!)と思い、今日歯医者に行ってきました。虫歯かと疑っていた歯が虫歯ではなかったのでよかったです。歯間にフロスを通す姿がこんなにかっこかわいい男の子なんてサイファ以外にいませんよ…… pic.twitter.com/dLBxC50I09
— クニシゲ (@kunishige_) April 9, 2019
当時の私は、歯みがきといえば歯ブラシだけでした。糸で歯のあいだを掃除する習慣があること自体が、小さなカルチャーショックでした。まさかその「漫画で見た不思議な道具」を、何年もたった今、毎日使うことになるとは思いませんでした。(使い続けて10年くらいになります!)
デンタルフロスは日本でいつ普及したのか
欧米で生まれた歯間清掃の習慣
デンタルフロスの起源は意外に古く、アメリカ人歯科医師のレヴィ・スピア・パーミリーが1815年に絹糸での歯間清掃を提唱したのが始まりといわれています。その後、第二次世界大戦中に切れにくいナイロン製のフロスが発明され、戦後に歯の清潔を保つ道具として重視されるようになりました。
日本で広まったきっかけ
日本の一般店頭にフロスが並ぶようになったのは1980年代です。1984年にジャックス(現デンタルプロ)が提案し、ダイエーがプライベートブランドとして販売したのが最初とされています。
大きな転機になったのは、1987年に発売された小林製薬の「糸ようじ」です。開発のきっかけは、新幹線の車内で外国人女性が人目を避けるようにフロスを使っているのを社員が見かけたことでした。当時は歯科医院で推奨され始めていたものの、つまようじに慣れた日本人には糸だけのフロスが使いにくく、まだ一般的ではありませんでした。そこで、持ち手つきで使いやすい形が工夫されました。
ここから、フロスは「面倒そうな道具」から「手軽な習慣」へと近づいていきました。ただ、令和4年の歯科疾患実態調査では、日本人のフロス使用率は50.9%でした。欧米に比べればまだ伸びしろがあるといえそうです。
フロスは歯垢を「取る」?それとも「防ぐ」?
結論から言うと、フロスの主な役割は、歯と歯のあいだにたまった歯垢(プラーク)を物理的に「取る」ことです。
歯垢は細菌のかたまりで、むし歯や歯周病の原因になります。歯ブラシは歯の表面の掃除は得意ですが、歯と歯の接する面には毛先が届きにくい道具です。歯ブラシだけの歯垢除去率は約50〜70%とされ、フロスを併用すると約90%まで高められるといわれています。
「付着を防ぐ」効果は、取り除いた結果としてついてくるものです。歯垢は時間がたてばまた作られるので、一度の掃除で永久に防げるわけではありません。そのため、こまめに取り除く習慣が大切になります。
糸巻きタイプを選んだ理由|フロスの種類について
デンタルフロスには、いろいろな種類があります。大きく分けると、持ち手のある「ホルダータイプ」と、巻かれた糸をほどいて使う「糸巻きタイプ」の2種類です。
私が使っているのは、糸巻きタイプです。必要な長さの糸を切り、両手の指に巻きつけて使います。常に糸の新しい面で歯間を磨くため衛生面に優れ、歯ぐきの奥まで深く糸を挿し込めるという特徴もあります。ホルダータイプは持ち手があるので使いやすいという方も多いと思いますが、糸巻きタイプは指で操作するぶん、口の中で自由に動かせるところが私は気に入っています。ただし、慣れるまでは少しコツがいるため、はじめての方にはホルダータイプがおすすめとされています。 okamuragroupokamuragroup
糸の素材にも、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレンなどがあるようです。表面にワックスが塗ってあるものもあります。正直に言うと、使い比べてみても違いはよくわかりません。それでも、自分の歯ぐきの状態に合わせて使い分けるとよいようです。たとえばポリエステル素材は切れにくく、歯のあいだが狭い方や詰め物のある方でも安心して使えるといわれています。 okamuragroup
毎日続けるメリットとデメリット
続けて感じるメリット
- 歯と歯のあいだの汚れが落ち、むし歯や歯周病の予防につながります。
- 食べかすが取れて、口の中がすっきりします。
- 歯ぐきの状態が整うにつれ、歯みがき時の出血が減ったと感じる人が多いです。
- 歯科医院での定期検診のとき、自分の口の状態に自信が持てます。
私自身、続けるうちに口の中の状態が安定していくのを感じています。ただし、効果の感じ方には個人差があります。
知っておきたいデメリット
- 手間と時間がかかります。慣れるまでは特に面倒です。
- 力を入れすぎたり使い方が合わなかったりすると、歯ぐきを傷つけることがあります。
- 歯のあいだが狭い人や、詰め物・被せ物がある人は、糸が引っかかったりほつれたりすることがあります。
- 消耗品なので、ランニングコストがかかります。
- 指に巻き付けるのでうっ血状態になります。(注意)
始めたばかりの頃は出血することがあります。これは歯ぐきが炎症を起こしているサインのこともありますが、痛みが強い場合や出血が長く続く場合は、無理せず歯科医院に相談してください。
フロスは毎日するべき?おすすめのタイミング
歯垢は短時間で再びつくられるため、基本的には毎日行うのが理想です。ただし、毎日が負担でやめてしまうくらいなら、まずは「寝る前だけ」と決めて始めるほうが続きます。私は、お風呂の中でやっています。その方が何となく続くような気がしています。
タイミングとしては、一日の最後の歯みがきのときが一般的です。就寝中は唾液の量が減り、細菌が増えやすいため、寝る前に歯のあいだをきれいにしておくことが役立ちます。
歯みがきの前と後のどちらがよいかは、意見が分かれます。先にフロスで汚れを取っておくと、歯みがき粉のフッ素が歯のあいだまで届きやすいという考え方がありますが、いちばん大切なのは、自分が続けやすい順番を見つけることではないでしょうか。
まとめ
デンタルフロスは、1815年にアメリカで提唱され、日本では1980年代から市販されるようになりました。「糸ようじ」の登場もあって、少しずつ暮らしに根づいてきた道具です。フロスの役割は、歯ブラシで届きにくい歯と歯のあいだの歯垢を取り除くことで、毎日続けることで予防の効果が期待できます。道具は、私のように糸巻きタイプを選ぶのも、ホルダータイプを選ぶのも自由です。自分の歯ぐきや使いやすさに合ったものを選べば大丈夫です。
私が少女漫画で見た小さなシーンは、30年たった今では当たり前の日課になりました。何気ない出会いが、自分の習慣になるのは不思議なものです。歯の本数は一生ものの財産ですから、無理のない範囲で、できることから始めてみてはいかがでしょうか。
なお、この記事は一般的な情報であり、医療的な診断や治療に代わるものではありません。歯や歯ぐきの状態は人それぞれなので、使い方や道具の選び方は、かかりつけの歯科医師や歯科衛生士にご相談ください。
参考情報
- 日本人に人気がない⁉ デンタルフロス【フロス&歯間ブラシ前編】(WEBQUA) https://www.webqua.jp/brush/column/10332/
- 小林製薬「愛され続けて30年『糸ようじ』の歩み」(ニュースリリース) https://www.kobayashi.co.jp/corporate/news/2017/170612_01/
- デンタルフロス(Wikipedia) https://ja.wikipedia.org/wiki/デンタルフロス
- デンタルフロス、使っていますか?(そらクリニック) https://sora0064.jp/blog_articles/1727510274.html
- デンタルフロスの種類6パターンを徹底解説、用途別におすすめの商品も紹介(デンタルフロスのオカムラ) https://www.okamuragroup.co.jp/column/1287/
- 厚生労働省「歯科疾患実態調査」


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