2026年5月15日、W杯北中米大会に臨む日本代表26人が発表された。読み上げられた4人目の名前が「長友佑都」だったとき、FC東京のクラブハウスで見守っていた本人の目に涙が浮かんだという。5大会連続選出は日本代表史上初、しかもアジア選手としても史上初の記録だった。
数字を並べてみると、その異常さがよく分かる。
「もう一つの代表歴」を持つ男
長友の代表キャップ数は通算145試合。これは歴代2位の数字だ。2010年南アフリカから2022年カタールまで、フィールドプレーヤーとしては史上初の4大会連続出場を果たしたあと、2026年大会で単独最多の5大会連続に記録を伸ばした。出場時点の年齢は39歳286日。自身が持っていた日本人最年長出場記録も同時に塗り替えている。
今大会からは、5大会以上出場した選手だけに与えられる「レガシーパッチ」という特別な記章が導入され、長友は対象となった5人のうちの一人になった。
ちなみに今年3月、彼は右ハムストリングの肉離れで一時戦線離脱している。復帰したのは6月6日の千葉戦、そして代表選出のラストチャンスとなった6月10日の東京V戦で先発を果たし、ギリギリで26人に滑り込んだ。森保一監督はこの試合を視察したうえで「インテンシティ高くプレーできることを確認した」と選出理由を語っている。楽な滑り込みではなかった。
本人が語る「役割の変化」
若い頃の長友の武器は、170cmという小柄な体格から繰り出すスピードと運動量だった。だが今の代表での役割は当時とは別物だ。長友自身がこの変化を指して使っている言葉が「空気清浄機」である。ピッチに立てなくても、チームの空気を整える存在でありたい、という意味だという。
実際、2024年3月にアジア杯後の代表に復帰してから今大会まで、出番のないまま20試合ほどをベンチやスタンドから過ごしてきた。それでも声を出し続けた理由を、長友は「出ている選手に勇気を与えたい」という趣旨で語っている。運動量で貢献する選手から、声とふるまいで貢献する選手へ。武器を作り替えながら居場所を保ってきたのが、この10年の実像に近い。
大会後に訪れた、これまでにない局面
ここからは今のリアルタイムな話になる。2026年6月25日、日本対スウェーデン戦への出場でアジア人史上初の5大会連続出場という記録を完成させたあと、長友の状況は大きく動いた。
W杯終了後、本人は燃え尽き症候群を発症したことを明かしている。そして同じ2026年のうちに、FC東京からの退団が正式に発表された。かつてイタリアのインテル、トルコのガラタサライ、フランスのマルセイユと渡り歩き、最後はFC東京で代表定着とキャリアの集大成を果たした長友だが、今この瞬間、次の所属先は決まっていない。
「40歳目前でもまだ現役バリバリ」という単純な美談として片付けるには、正直タイミングが微妙な時期だ。歴史的な記録を打ち立てた直後に、心身ともに削られている。この振れ幅こそが、逆にリアルなプロアスリートの姿だと思う。
数字に出てこない部分
長友を語るとき数字と同じくらいよく出てくるのが、2022年カタール大会後のインタビューでの「ブラボー!」だ。この年の流行語大賞トップ10にも選ばれている。加えて、対戦して一番衝撃を受けた相手はキリアン・エムバペで、理由は単純に「速すぎる」から、と語っているのも印象的だ。長友ほどの選手でも、そう言わせる相手がいる。
私生活では2017年に平愛梨さんと結婚。仲の良い選手として名前が挙がるのは同世代の香川真司だ。
まとめ
長友佑都のすごさは「40歳目前でも現役」という一言では片付けられない。145試合という歴代2位の実績、アジア人史上初の5大会連続W杯、そして直近のハムストリング負傷からの滑り込み選出。記録づくめの一方で、大会後には燃え尽き症候群とクラブ退団という、これまでにない試練にも直面している。
「まだまだ挑戦できる」と綺麗にまとめるより、今の長友はむしろ、記録を打ち立てた直後に次の一歩を模索している最中だ、と捉えるほうが実像に近い気がする。



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