中村敬斗の「Kポーズ」、実は向きを間違えていた

チュニジア戦、前半4分。鎌田大地のゴールをお膳立てした中村敬斗が、両手を頭の上でクロスさせるように組んで「K」の形を作った瞬間、正直テレビの前で「え、何のジェスチャー?」と首をかしげた。

答えはすぐに本人の口から語られた。負傷でベンチにも入れず、治療に専念していた久保建英へのメッセージだったのだ。試合前、二人の間には「点に絡んだらやる」という約束があったらしい。

ここまでは、多くのニュースサイトが伝えている通り。でも個人的に一番グッときたのは、その後に出てきたある一言だった。

実はポーズ、逆だった

試合後の会見で中村は、あのポーズについて聞かれ「(向きが)逆になってしまった」「やり慣れないから、どっちかあんまり意識してなかった」と、ちょっと照れくさそうに明かしている。

これがいい。決めたつもりが、本番では緊張と興奮でとっさに逆の手を組んでしまう。その不器用さが、逆に約束の本気度を物語っている気がした。カメラ写りとか、映え方とか、そういう計算とは無縁の場所で生まれたポーズだったということだ。

久保が出られなかった理由

久保はグループリーグ初戦のオランダ戦で左ひざを負傷し、MRIの結果を受けてチュニジア戦は欠場が決まっていた。今大会ここまでチームの攻撃を引っ張ってきた選手が、大事な一戦を外からしか見られない。その悔しさは、本人にしか分からない重さだと思う。

だからこそ、中村が真っ先に指を向けたのが久保だった、という事実に意味がある。ゴールを決めたのは鎌田だが、アシストした自分の喜びより先に、ベンチにすらいない仲間を思い出す。しかもそれを、事前に約束していたという段階から実行に移している。有言実行というやつだ。

スタッド・ランスでの2年間が土台にある

中村と久保はポジションも近く、代表の合宿でも自然と行動を共にすることが多いと言われている。実際、中村はブラジル戦での同点ゴールを振り返った際にも、伊東純也との「2年間一緒にやってきたから来るとわかっていた」というような趣旨のコメントを残しており、長く同じピッチに立ってきた選手同士の勘の良さを何度も口にしている。久保との関係も、そうした積み重ねの延長線上にあるのだろう。

個人的な記憶と重なった

昔、草サッカーで足首を痛めて試合に出られなかったことがある。ベンチで見ているだけの自分に、仲間が得点後わざわざ駆け寄ってきて肩を叩いてくれた。あの時の「自分もチームの中にいる」という感覚を、久保も感じていたんじゃないかと勝手に想像してしまう。

スポーツの見どころは得点やスコアだけじゃない。誰のために体を張っているか、その一瞬の仕草に滲み出るものがある。中村の不格好な「逆Kポーズ」は、その最たる例だったと思う。

久保の復帰後、この二人が同じピッチに並ぶ試合を見られる日が楽しみだ。

コメント